やさしさとは何か2〜社会脳の発達傾向。人口割合と特徴〜

やさしさマップ 経験談
やさしさマップ

「あくびはうつる」って、よく聞きますよね。

一人があくびをすると、それを見た周りの人もどんどんあくびをしはじめる現象のことです。

まるで「あくび」を誘う見えない妖精のいたずらか、呪いか、ウイルスのようなものがあって、感染拡大しているように見えるので「あくびはうつる」と言われ始めたようです。

あくびがうつるひとのイラスト

あくびがうつる

落語の「あくび指南」を見た観客が噺家の演技につられてあくびをしてしまうという話も有名ですし、私もオフィスで仕事をしていて同僚から同僚へあくびがうつっている様子を見かけたことがあります。

真面目に研究している人の実験では、モニターの映像、スピーカーの音、あくびを描写した文章を読んだ人などにも「あくびがうつる」現象がみられたそうです。

こう聞くと、あくびは誰にでもうつるのかな?と思いますよね。

でも、私自身は人のあくびがうつった経験がありません。

きっと私と同じように「あくびがうつった経験がない」人もいるだろうなと思いました。

なので、世の中には、

・「あくびがうつりやすい」タイプの人
・「あくびがうつりにくい」タイプの人

の2種類がいるのだろうと考えるのが、私にとっては自然な流れでした。

では、どんな人がうつりやすいタイプで、どんな人がうつりにくいタイプなのでしょうか?

答えを先に述べると、

脳の中にある「社会脳」という部分の動き方の違い

によって、あくびがうつりやすい人とうつりにくい人がいるという事なのだそうです。

この「社会脳」を知ることが今回の記事のテーマの一つであり、「やさしさ」をより深く知るためのキーワードです。

「やさしさ」は「社会脳」の影響を受けています。
「社会脳」の発達に個人差があるため、「やさしさ」に個人差が生まれ、人間関係に相性が生まれます。

今回は、「社会脳によるやさしさの違い」について考えていきます。

やさしさと社会脳

まずは、社会脳について説明します。

社会脳とは

脳はたくさんの部品の集まりです。

部品によって得意な役割があり、

・目から入ってくる情報を処理するのが得意な部品は「視覚野(しかくや)」
・耳から入ってくる情報を処理するのが得意な部品は「聴覚野(ちょうかくや)」

などと呼び、互いに連絡を取りあいながら分業しています。

(脳の一部が損傷すると別の部品が役割を代わる場合があるので、「得意な役割」という表現を使っています)

社会脳ネットワーク

脳の部品ごとの役割分担

これらの部品の中に、人とコミュニケーションする際に活発に動く部品がいくつもあります。

そして、部品同士が複雑に繋がってネットワークを形成しています。

この、「人とコミュニケーションするときに活発に動く部品のネットワーク」のことを、ひとまとめに「社会脳」と呼びます。

そして、この社会脳の動き方には、生まれつき個人差があります。

社会脳の個人差

冒頭で、「あくびがうつりやすい人と、うつりにくい人がいる」というお話をしました。

この答えを探すには、次の実験結果が参考になります。

・自閉症児は、定型発達者に比べてあくびがうつりにくい

なぜ自閉症児はあくびがうつりにくいのか、という疑問に対する答えは、今のところ、社会脳の機能の一つである「ミラーニューロンシステム」に違いがあるからではないか、という考えがポピュラーなようです。

ミラーニューロンシステム

「ミラーニューロンシステム」とは、人の動きを観察して真似をする部品の集まりのことです。

例えば、定型発達の赤ちゃんは、

・親の笑顔を見ると笑顔を返す
・大人のする仕草を真似しようとする

といった特徴があります。

これは、定型発達の脳がミラーニューロンシステムのスイッチを常にONにしている為と考えられています。

定型発達の人は、大人になってもミラーニューロンシステムが常にONになっているので、誰かがあくびをするとつられてあくびが出てしまう人が多いのではないか、という推測がされています。

これに対して、自閉症児は、

・親が笑顔を見せても笑顔を返さない
・大人が拍手やバイバイの仕草をしても真似しようとしない

などの特徴を示すことがあります。

その原因の候補として、ミラーニューロンシステムの動きに違いがあり、スイッチがONになる条件に違いがあるという事実が挙げられています。

自閉症の人が、大人になってもミラーニューロンシステムの動きが定型発達と異なり、その影響であくびがうつらないのではないかと考えられます。

自閉症スペクトラム

今では、自分に自閉症があるという自覚がないまま学校や社会で生活し、苦労を感じている人々がいることが知られています。

日常生活で出てきた自閉症の特徴が、仕事、学習、生活、健康、人間関係などに大きな障害となっている場合、専門家に相談すると「自閉スペクトラム障害(ASD)」と診断されることがあります。

自閉症の特徴を自覚しながら、我慢、工夫、諦め、取捨選択、周囲の理解や協力などによって、苦しみながらも仕事や生活をなんとか自立できるレベルに保てている場合や、いろいろ恵まれたおかげで所属する社会で平均以上の暮らしを実現できている場合は「自閉スペクトラム状態(ASC)」と呼ばれます。

ここまで紹介してきた、事実や実験結果や推測などを積み上げると、「あくびがうつりにくい人」には、ASDやASCと呼ばれる人たちも該当するだろうと考えられます。

そして、「スペクトラム(連続)」という言葉が入っていることからもわかるように、自閉症の強さは定型発達も含めてグラデーションのように個人差があるとされます。

定型発達と自閉症の境界はあいまいで、定型発達者の中にも自閉傾向があり、その強さに個人差があります。

自閉症と診断されるくらい自閉傾向が強くても恵まれていれば生活レベルが維持できることもありますし、逆に自閉傾向が弱くても他の要因も悪ければ日常生活が困難になり支援が必要なケースもあります。

スペクトラム(自閉傾向の強弱)

スペクトラム(自閉傾向の強弱)

視線の感じ方

定型発達と自閉症(ASD、ASC)の違いについて、もう一つ紹介したい特徴があります。

それは、視線に対する感覚の違いです。

例えば、

・ふと顔を上げると、人混みの中から待ち合わせしている人と偶然目があう
・なんとなく気配を感じて振り向くと、知り合いが自分を追っていた
・女性であれば、胸元に向けられる男性の視線に気づく

など、これらは定型発達者にとってはありふれた日常経験ですが、実は、これらも社会脳が関係していると言われています。

定型発達者にとってのありふれた日常経験は、社会脳の動きが異なる自閉症(ASD、ASC)の人にとっては、ごく稀にしか起こらない経験であったり、日常的であっても鈍感だったりします。

この視線の感じ方の違いが、人の意図や気持ちを察する「やさしさ」に大きく影響します。

定型発達者同士であれば、お互いに似た感覚を持っているので気持ちを察し合うことが容易です。

同様に、自閉症(ASD、ASC)同士であれば、お互いに似た感覚を持っているので気持ちを察し合うことが容易です。

しかし、定型発達と自閉症(ASD、ASC)は感覚が違うもの同士なので、気持ちを察し合うことが困難になります。

 




 

発達傾向の割合

ここまで、定型発達と自閉症の違いにフォーカスを当てて社会脳の一部を説明しました。

社会脳の動きが違う発達傾向は、他にもあります。

このブログでは、先に取り上げた「定型発達」と「自閉症」に加えて、現在ポピュラーな次の2つの発達傾向を取り上げます。

・注意欠陥・多動(ADHD)
・非道徳性(サイコパシー)

4つの発達傾向は、大雑把にみて、次のような人口割合となっています。

発達傾向_人口割合

発達傾向_人口割合

・定型発達 85%
・注意欠陥・多動(ADHD) 5%
・非道徳性(サイコパシー) 5%
・自閉症(ASD、ASC) 2.5%
・その他(学習障害や吃音症など) 2.5%

%だと「100人中○人」と考えてしまいイメージしにくいので、多くの学校の1クラスのように「40人中○人」で考えてみましょう。

・定型発達 40人中34人
・注意欠陥(ADHD) 40人中2人
・非道徳性(サイコパシー) 40人中2人
・自閉症(ASD、ASC) 40人中1人
・その他(学習障害や吃音症など) 40人中1人

この規模感であればイメージしやすい方が多いのではないでしょうか。

思い返せば、小学校〜中学校の9年間で、毎年クラスに2人くらいは落ち着きなく忘れ物が多い人がいたり、2人くらいは支配的で暴力的な人がいたり、1人くらいは吃音やチック症の人がいた記憶があります。

また、「ADHD」「サイコパシー」「自閉症」「その他の発達傾向」は、2つ以上が併発していることもあります。

呼び方について

先に取り上げた「定型発達」「注意欠陥・多動」「非道徳性」「自閉症」などの呼び方についてですが、すでに広く一般に普及しているので、一旦は便宜的に使用しました。

しかし、実は私はこの呼び方があまり好きではありません。

例えば「定型発達」ですが、もともとは”Neurotypical”という英単語で、直訳すると「典型的な神経回路」となります。

決して、「型に定まった通り正常に発達した」という意味ではないのです。

しかし、”Neurotypical”が「定型発達」と訳されてしまい、時には「健常者」と訳される事もあり、そうではない人たちが異常であるかのような印象になってしまっています。

ですので、このブログでは、

「定型発達」→「典型発達」(ありふれた脳神経の発達)

と言い換えます。

そして、「注意欠陥・多動」「非道徳性」「自閉症」という呼び方についても、「定型発達」の人たちから欠点に見える部分に注目した呼び方であり、「定型通りに発達しなかった異常な人たち」という印象とレッテル貼りになってしまっています。

ですので、このブログでは、それぞれの優れている面に注目して、

「注意欠陥・多動」→「探索志向」
「非道徳性」→「利益追求」
「自閉症」→「集中志向」

に言い換えます。

このような呼び方を採用する理由を、それぞれ説明します。

【ADHD】注意欠陥・多動→探索志向

遊牧民

遊牧民

ADHDの人は、定住生活をすると栄養不良になり、遊牧生活をすると健康になる傾向があるという調査結果があります。

ADHDは、「身の回りの変化に敏感で常に気を配ることができ、気になったことがあると衝動的に確かめたくなる気質」があります。

この気質が、定住生活では「集中力がなく、じっとしていられない」欠点とみなされますが、遊牧生活では「家畜を守ったり食料や水をよく探し当てる」ことに役立ちます。

つまり、遊牧生活ではADHDは有能で、典型発達者は障害者になりえるでしょう。

「移動しながら周囲に気を配り、気になるものを確かめる」を一言で表現すると「探索志向」が最適ではないかと思いました。

なお、ADHDもスペクトラムになっており、典型発達との境界はあいまいで、典型発達にもADHDの傾向の強弱に個人差があります。

【サイコパシー】非道徳性→利益追求

お金を稼げる人が偉い?

利益追求✖️結果にコミット✖️非道徳性

サイコパシーは、組織の支配階層、大企業の管理職や経営者に多いとされます。

典型発達から見える欠点としては、自分の利益の為に人を思い通りに操作しようとしたり、冷酷で、人を傷つけても罪悪感を覚えない傾向があるとされます。

感情の起伏が激しいタイプの場合は、衝動的な暴力行為があったり、多くの犯罪歴がつくことがありますが、計算高いタイプの場合は、社会にうまく溶け込み、損になることは人に押し付け、得になることは人から奪ってでも自分の成果とし、平然と嘘をつき、法的なグレーゾーンも躊躇せず踏み込み、良い結果だけを求めます。

つまり、反社会的な行為を「リスクヘッジとして」自重する知恵があったり、「誰にもバレなければ」「誰も傷つけなければ」「上司に褒められれば」何をやっても許されるというような思考によって、結果にコミットすることが得意です。

ここまで意地悪な言い方ばかりを並べていますが、こういった汚れ役を平気で行ってくれる人がいるおかげで実は組織が助かっている場合もあります。

これらの特徴を一言で言い表すと「利益追求」が最適ではないかと思いました。

なお、サイコパシーもスペクトラムとなっており、典型発達との境界はあいまいで、典型発達にもサイコパシーの傾向の強弱に個人差があります。

【ASD、ASC】自閉症→集中志向

自閉症_集中力

集中力

目の動きを観察して記録するアイトラッカーという機械があります。

これをASDに装着して記録をとると、典型発達とは異なる視線の動きをするそうです。

・真っ白な画面に無機質な物体を1つ浮かび上がらせ、そこに視線を集中させたあと、2つ目の物体を浮かび上がらせると、2つ目の物体に視線を移動させるまで、典型発達よりも時間がかかるそうです。

・今度は、真っ白な画面に人の顔を1つ浮かび上がらせ、そこに視線を集中させたあと、2つ目の顔を浮かび上がらせると、2つ目の顔に視線を移動させるまで、典型発達よりも素早い動きをするそうです。

自閉症者は、典型発達の目から見ると、こだわりが強く、興味の向く先が独特で、言葉を文字通りに解釈してしまうので意図が伝わりにくく、空気が読めず、共感性に欠け、融通が利かないとされます。

しかし、典型発達とは異なる視野があるおかげで、見逃しがちな大切なことに気付いたり、特定の物事を没頭して考え新たな発見をしたり、思い込みなく言葉の意味から正確に内容をとらえたり、飽きずに反復的な動作を繰り返すことで技術的な精度を高めたりします。

これらの特徴を一言で言い表すと「集中志向」が最適ではないかと思いました。

先ほども触れましたが、典型発達との境界はあいまいで、典型発達にも自閉症の傾向の強弱に個人差があります。




 

発達傾向ごとの「やさしさ」

ここまで、社会脳の発達傾向によって、大きく4つのタイプに分類できることを説明してきました。

この4タイプを、前回の記事で紹介した「やさしさの振り分け」で違いを考え、特徴を浮き彫りにしたいと思います。

発達傾向ごとの「やさしさの振り分け」

「やさしさの振り分け」は前回紹介した次のようなグラフで表します。

やさしさ能力ステータス

やさしさ能力ステータス

「感覚」「損得」「論理」「美学」の能力ステータスの振り分けを、「典型発達」「探索志向」「利益追求」「集中志向」の4タイプでそれぞれ考えていきます。

典型発達(定型発達)

典型発達者(定型発達者)は、全体の85%を占めるマジョリティです。

1クラス40人中34人も似た感覚を持つ人たちに囲まれて思春期を過ごします。

彼らはまず、自分と感覚の違う6人を排除し、感覚が似ている34人の中からさらに気が合う人を厳選してグループを作り、時の移ろいと共に取捨選択して人付き合いをしてきました。

自分の感覚を「人として当たり前」のものだと思い、感覚から生まれる自分の感情を「人として当たり前」のものだと思い、共感しあえる人同士で心地よい時間を作ることを重要視してきました。

よって、典型発達者のやさしさは「感覚」に大きく振れています。

やさしさの振り分け_典型発達

やさしさの振り分け_典型発達(定型発達)

彼らは自分の経験した感覚と感情からわかる範囲で人の気持ちを推量する癖があり、自分と感覚が違う人に対してやさしく接するための知識を仕入れる習慣が不要でした。

よって、「論理のやさしさ」は小さくなります。

彼らが「論理のやさしさ」を自ら望んで能動的に仕入れる場面は稀です。

あるとすれば、例えば、自分の子供が「発達障害」と診断されれば、やっと能動的に勉強し始めるのかもしれません。

以前Twitterで、典型発達の親が「発達障害の子供の心がわからない!」と嘆くツイートをすると、発達障害当事者の人たちから多くのアドバイスが集まったことがありました。

しかし、その親はアドバイスをしてきた発達障害当事者のアカウントを次々とブロックしました。

典型発達の親が欲しかったのは、現実的なアドバイスではなく、「子供の心がわからなくて大変だ!」という気持ちを共感して癒してくれる相手だったのです。

探索志向(ADHD)

私は、SNSで「発達障害」や「ASD」や「ADHD」をプロフィールで公開している人を多くフォローし、何年もの間つぶやきを見て、引用リツイートやリプライなどでやりとりを繰り返してきました。

そしていつしか、「ADHD」を名乗る人たちは、博愛的で平和主義的な発言が多いということに気がつきました。

大きな事件、事故、災害などがあると、とても心を痛め、我関せずという態度をとることがありません。

そして、自分や身内や仲間だけでなく「世界中の人たちすべてが幸せに」と願い、「人助けをしたい」「人の役に立ちたい」と思っており、福祉やボランティアに従事する人が非常に多いと感じますし、健康を損なっている場合は「いつか健康になったら人の役に立つ事をしたい」という旨の発言をすることが多いです。

やさしさの振り分け_ADHD

やさしさの振り分け_探索志向(ADHD)

自分の時間と体力を費やして人に奉仕するような、自己犠牲的なおもいやりと行動は尊敬に値します。

その反面、お金の稼ぎ方やキャリアの作り方など、現実的なアドバイスをする力に欠けているように感じます。

よって、「損得のやさしさ」は低いと評価せざるを得ません。

利益追求(サイコパシー)

このタイプは、探索志向(ADHD)と対照的なやさしさを持っていると感じます。

「サイコパス」を名乗るYoutuberや、社会的に成功しお金を大変に稼いだ動画配信者が視聴者の悩み相談に答えるとき、決まって「金銭的な損得」に偏ったアドバイスをする傾向があります。

また、私自身も、これまで転職を繰り返して様々な職場で「サイコパシー」と疑われる上司と関わってきましたが、何か意思決定が必要な場面では、リスクリターンの計算がとても早く頼りになることが多いと感じますし、局所的に道徳面で疑問を感じても、結果的に多くの人が助かることがあります。

本人の中では「こうなった方が自分は嬉しい」という感覚があり、それを自分なりに懸命に説明してくれている訳ですから、相談者と流儀が異なるアドバイスをしているとしても、それは広義の「やさしさ」と解釈しても良いのではないかと思っています。

やさしさの振り分け_サイコパシー

やさしさの振り分け_利益重視(サイコパシー)

その反面、やはりこのタイプは「道徳」「倫理」「法令遵守」に欠け、責任を回避し、自分の得にならないことには動かない傾向があります。

よって、「美学のやさしさ」は低いと評価せざるを得ません。

以前、人の心がわかり操れることを売りにしている某タレントYoutuberが「ホームレスよりも野良猫を救ってくれた方が嬉しい」という旨の発言をし、炎上したことがあります。

集中志向(ASD、ASC)

集中志向(ASD、ASC)は、全体の2.5%しかいないマイノリティです。

子供の頃に親が気づいて診断を受けられれば、療育などの支援を受けたり、自覚的に対処することもできるでしょう。

しかし親が気づいてくれない場合は、1クラス40人中1人の割合で存在し、自分とは違う感覚の人達に囲まれて、そうとは気づかずに幼児期と思春期を過ごします。

ありのままの自分の感覚で「楽しい」「嬉しい」「面白い」と思うことを周囲の人と共有したいと思って伝えても共感を得られることが非常に少なく、「苦しい」「つまらない」「嫌だ」と感じる出来事やタイミングが周囲と異なるので、予想外のことで顰蹙を買ったり、嫌われたりします。

嫌われて傷つく心は持っているため、経験と学習によって「こうすれば嫌われる」「この場合はこう行動すれば嫌われる可能性が低い」というように、自分の行動をパターン化して演じることでなんとか溶け込もうとします。

ただし、若い頃は大雑把なパターン化しかできないので、思春期に微妙にニュアンスが異なる状況に遭遇すると、場に合わない奇異な行動をして顰蹙を買い、周囲から浮いて孤立していくことになります。

成長して多くの経験を蓄積していくにつれて、行動のパターン化がより詳細に、精度が高くなっていきます。

ASDを公表している方が、「定型向け回答集が頭の中にある」「コンピュータ言語のIF文が頭の中にいっぱい保存されているようなもの」と説明されていて、まさにその通りと感心したことがあります。

集中志向(ASD、ASC)の「やさしさ」は、知識と経験に基づく「論理」によって形作られていると言えます。

やさしさの振り分け_集中志向(ASD、ASC)

やさしさの振り分け_集中志向(ASD、ASC)

マイノリティであるという点では、探索志向(ADHD)と利益追求(サイコパシー)も同じです。

しかし、探索志向(ADHD)のような平和主義者ではないので、論理的に筋が通っていないと納得するまで議論しようとして嫌われたり、利益追求(サイコパシー)のように結果で黙らせるというようなことができません。

マジョリティである典型発達(定型発達)との相性が悪く、感覚を逆撫でするような行為が(悪意はなくても)多くなってしまうため、「感覚のやさしさ」は低いと評価せざるを得ません。

おまけ:やさしさマップ

上で紹介した「発達傾向ごとのやさしさの振り分け」を、前回の記事で紹介した「やさしさの4大要素」に当てはめると、次のような「やさしさマップ」が出来上がります。

やさしさマップ

やさしさマップ

上のマップは考えやすくシンプルにするため、便宜上、くっきりと境界をつけて分けています。

全ての発達はスペクトラムとなっており、境界があいまいで、傾向の強弱に個人差があります。

実際は複数の発達傾向が併発している場合もあり、もっと複雑なものとなっていますが、「やさしさ」を考えるきっかけとしては使えることがあるかもしれません。

まとめ

新型コロナウイルスが流行してから、私のお仕事は自宅でのリモートワークに切り替わりました。

出社の頻度は数ヶ月に1回であり、基本的にはSlackやChatworkといったパソコンで使うLINEのようなコミュニケーションツールや電子メールなどを使って仕事を進めます。

そこで感じたことは、典型発達の人と集中志向の人との「立場の逆転」でした。

リモートワークでは、どうしても声のやりとりが少なくなり、文字で連絡することが増えます。

そうすると、「言葉を額面通りに受けとる」ことができる集中志向の人の方が、スムーズに仕事ができるのです。

逆に、「表情、目配せ、声色などの非言語コミュニケーションも含めて、言葉の意味よりも意図を重視して会話する」という特徴のある典型発達の人は、リモートワークがどうも苦手なようで、文字だけでは「重要な部分」や「注意事項」をスムーズに理解してもらえず、わざわざビデオ通話を繋いで説明しなければならないことが多いです。

また、チャットでやりとりをしている時の、ほんのわずかな返事の早さの変化を敏感に察知して、相手の考えや不安を見抜いてフォローしたりすることが、集中志向の人達にはよくあります。

リモートワークでは、まるで典型発達者の方がコミュ障のように感じます。

出社している頃は変わり者と言われていた人たちが、自宅作業で生産性が落ちないどころか、逆に集中力が増して生産性が上がっている様子を見ると、爽快感すら感じます。

探索志向の人たちが遊牧生活で活躍し、定住生活で体調を崩し気味になるのと同じような状況が、リモートワークによって現れているのだと思います。

時代と環境の変化によって、人の特性は長所と短所が入れ替わり、必要なやさしさやおもいやりも変わってくるでしょう。

「自分が若い頃はこうだった」という経験にとらわれない柔軟性も「やさしさ」には必要なのかもしれません。

これからの時代のキーワードは「ニューロダイバーシティ(脳神経の多様性)」です。

私の「やさしさ」についての考察は、一旦ここで締めとしますが、奥深く興味が尽きないテーマなので、また何か考えることがあれば記事を書きたいと思っています。

参考資料

千住淳著「自閉症スペクトラムとは何か」

サリ・ソルデン著「片づけられない女たち」Sari Solden “Women With Attention Deficit Disorder”

ロバート・D・ヘア「診断名サイコパスー身近にひそむ異常人格者達ー」Robert D. Hare “WITHOUT CONSCIENCE The Disturbing World of the Psychopathe Among Us”

ジェームス・ファロン「サイコパス・インサイド」James Fallon “The Psychopath Inside”

ローナ・ウィング著『自閉症スペクトル―親と専門家のためのガイドブック』Lorna Wing “Autistic Children: a Guide for Parents”

ハンス・アスペルガー著『治療教育学』Hans Asperger “HEILPAEDAGOGIK”

注意欠陥多動性障害は遊牧民には有利か、米大学研究 https://www.afpbb.com/articles/-/2402993

サイコパシー特性と非道徳的行動の関係に対するサポートの調整効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/89/1/89_89.16003/_article/-char/ja/




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