<モラハラ事例1>
職場でトラブルが起こったとしましょう。
AさんがBさんを激しく叱責しています。
Bさんが仕事でミスをした事でAさんが迷惑を被った為、Aさんは他の従業員が見ている前で感情を爆発させてしまいました。

一見、Aさんが加害者に見える
現代の一般的な考え方では、一見すると、感情的になっているAさんに問題があるように見えます。
もし仕事でBさんにミスがあったとしても、他人の見ている前で叱るのはBさんの自尊心を傷つけますし、それを見ている周囲のストレスも大きく、職場全体の生産性が下がる遠因にもなります。
Aさんはアンガーマネジメントが出来ない人と評価され、上司に注意されたり、周囲から遠巻きにされてしまうでしょう。
でも、ちょっと待ってください。
もし、BさんがAさんに対して日常的に皮肉を言ったり、無視したりなどの態度を取っていたとしたら、どうでしょうか?
周囲に気付かれないよう周到に、Aさんに対して毎日少しずつ薄い毒を盛るように、ジワジワと精神を削っていたとしたら?
それをAさんが人知れず、ずっと我慢していたとしたら、どうでしょうか?
叱責されたBさんは、Aさんをパワハラで訴えれば、たやすく被害者ポジションに居座る事ができます。
訴える事まではしなくても、叱られたBさんには周囲が気持ちのフォローに回るでしょう。
「Aさんは感情のコントロールが難しく、性格に問題がある」と言えば、Bさんは自分の身を守れますし、周囲も同情しやすいのです。
Aさんの方も、思わず感情的になってしまった負い目があるので、強気に出られず、理解者も得られず、孤立し、立場を悪くします。
気に病んだAさんは、やがて体調を崩しがちになり、会社をよく休むようになり、ますます立場を悪くしていき、やがて自主退職に追い込まれてしまいました。
結果を先にお伝えすると、これは、実はモラハラだったという典型的な一例です。
加害者は叱責されたBさん、被害者は叱責してしまったAさんだったのです。
実は、Bさんは日常的にAさんに対して皮肉を言ったり、業務上の必要な伝達事項を伝えなかったり、悪い噂を流したり、意図的に仲間外れにするなどの嫌がらせを行っていました。
それらの行為は、周囲から見れば、それほど目に付くものでもない、取るに足りない些細な内容ばかりでした。
しかしそれが長期間に渡って頻繁に行われていた為、徐々にAさんの精神を蝕み、ついに我慢の限界を超えてしまったのです。
会社などで人をまとめる立場にいる人は、こういった事例を知らずにいると、表面的な状況だけを見てしまい、加害者と被害者を逆に判断してしまうでしょう。
今回の記事は、当ブログの筆者の体験を踏まえつつ、職場と家庭におけるモラハラについての解説と対処方法を考えていきます。
モラル・ハラスメント(モラハラ)とは
モラル・ハラスメントとは、「精神的暴力」または「精神的虐待」のことです。
典型例の一つが、冒頭に紹介したように、「言葉や指示や態度などによって、小さな嫌がらせを継続的に行ってターゲットの精神を徐々に蝕んでいく」というものです。
追い詰めたターゲットから反抗されると、それをネタにターゲットを加害者に仕立て上げ、自分が被害者のように振る舞うという特徴があります。
他に、「周囲を利用して間接的にターゲットに嫌がらせを仕掛ける」というものがあります。
事例を紹介します。
<モラハラ事例2>
モラハラ気質の上司が2名の部下を持ってまもなく、2名の間に不和の種を撒き、部下同士を対立するよう仕向けました。
特に部下の1人が自分より優秀だと気づくと、もう一方をあからさまに優遇し始めました。
優秀な方の部下は不安を覚え、必死に自分をアピールしようとボトムアップで改善案を出しますが、無碍に却下して無力感を与えたり、無理難題な仕事を振られてろくにフォローも受けられず、苦悩するようになりました。
そして当然のように良い結果が出ず、それをネタに評価を下げるなどの行為を繰り返し行われ、やがて異動に追い込まれてしまいました。
「モラハラとは何ですか?」と聞かれても、明確に説明できる日本人は、残念ながら今のところ少ないでしょう。
モラル・ハラスメント(モラハラ)という言葉は、1998年、フランスの精神科医であるマリー=フランス・イルゴイエンヌさんの著書『モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない』(Marie-France Hirigoyen” le Harcèlement Moral : la violence perverse au quotidien”)で提唱されました。この本はベストセラーとなりました。
日本では1999年に翻訳され、出版されています。
出版されてから20年以上経過しますが、日本ではセクハラやパワハラに比べて、モラハラの理解が進んでいないと感じます。
当ブログの筆者は、これまで、「大企業・中小企業・フリーランスのグループ」「肉体労働・オフィスワーク」「正規・非正規・日雇い」など、様々な職場を経験してきましたが、比較的ハラスメント対策に力を入れている企業の部長クラスでさえ、モラハラを「精神的な嫌がらせ」としか答えられず、具体的な嫌がらせの手法・特徴・対策を明確に説明することはできませんでした。
そして現状、セクハラやパワハラに対する世間の意識は以前に比べて著しく進んでいるものの、モラハラによる職場のブラック化には歯止めがかかっていないように思われます。
なぜなら、これまで紹介した2つの事例のような知識を持っていないと気をつけようがなく、むしろ加害者と被害者を取り違えてしまう傾向があるからです。
裁判沙汰に発展する事例の場合、検事や弁護士や裁判官すらもモラハラ加害者に操られ、被害者を悪人に仕立て上げてしまう事もあります。
モラハラを完全に無くすことは難しいでしょうが、自分や組織を守る為にも、またはモラハラ加害者をこれ以上のさばらせない為にも、モラハラとはどのようなものか、もっと多くの方が詳しく知る必要があると思っています。
モラハラ加害者の特徴
モラハラ加害者には、以下のような特徴があります。
・頻繁にターゲットをけなす言葉を吐くが、罪悪感は微塵もなく、単なるコミュニケーションの形の一つだと思っており、もし相手が気分を害しているのなら、それは相手の受け取り方に問題があると考える
・自分の話す内容はいつも冷静で論理的か、または筋が通っていると思っており、人の言う事が理解できない場合は自分の理解力が無いのではなく、人が詭弁を述べているのだと決めつける
・自分が加害者に見られかねないミスを犯しても、言葉巧みに、容易に自分を正当化したり、他者に責任を押しつけたりできる賢さがある
・外見、性格、お金、立場などの中に、どれか一つでも人を惹きつける魅力や従わせる要素があり、権謀術数に優れ、周囲の心や行動を巧みに操る
・自己愛や虚栄心が強く、自分は称賛に値する優秀な人間だと思っている。または人前では謙遜しつつも心のどこかで自分は優秀な人間だと思っている
・自分を取り立ててくれる(利用価値のある)存在には印象よく振舞うので、組織に長くいると出世したり、それなりのポジションにつく事が多い
・他者や部下などの手柄を平気で横取りする
・他者の協力のおかげで成功しても、自分の能力が高いから成功したのだと心の底から思っており、他者を立てるような事を言わない
・人を好きになる為に、その分、別の人を嫌いにならなければならない
・人や物を褒める時、別の人や物を貶めずにはいられない
・人を傷つける事に躊躇がなく、反抗されると高揚感を覚える
・論争が好きだが、自分から仕掛ける場合に限る。ターゲットから話し合いを求めてくると拒否し、逃げたり殻に閉じこもったりする
・論争では断定口調が多く、「お前は○○な人間だ」というように、ターゲットの性格や振る舞いの意図などを、自分の都合の良いように決めつける
・同僚や家族との関係性において、いつも自分の方が譲ってあげたり、我慢を強いられたりしている側だと思っており、相手も何かしら自分に対して譲ってくれたり、我慢している事があるかもしれないという想像力が働かない
・自他の境界が曖昧で、例えば家族の所有物を自分の物のように扱い、勝手に使用したり移動させたりする
・執着心が強い場合、他部署や他社へ移ったターゲットにもしつこく加害する事がある。配偶者の場合は離婚後にも共通の知人や子供などを通じて間接的に嫌がらせを行う
・タバコを吸う習慣があったり、辛くて刺激的な食べ物が好きだったりなど、人体のあらゆる感覚器官が鈍感である為、五感で人の気分を感じとり、共感し配慮する能力に欠ける
・上記、ここまでの内容を読みながら「自分はモラハラ加害者には該当しないだろう」と感じる
いかがでしょうか。
家族や職場の人々に心当たりがあれば、気づけた事を喜びましょう。
「あの人はモラハラ加害者の可能性がある」
と、まずは認識する事が大切だからです。
認識できないものは気をつけようがなく、対策を考える事もできないからです。
また、上記の特徴を見て、
「自分にも似たような部分があるかもしれない」
「自分はもしかしたらモラハラ気質かもしれない」
と、反省し始めた方はいるでしょうか?
そういった方は、むしろモラハラ加害者の可能性は低くなります(絶対ではありませんが)。
あえて上記の一覧に入れませんでしたが、モラハラ加害者の最も特徴的な性格は、
・自分を責めない
・いつも自分は悪くない
だからです。
モラハラ加害者は自己愛が強いので、「自分が悪い」「自分の責任」という事実と直面する事に耐えられないのです。
なので、「あなたの行為はモラハラですよ」と言われた場合の反応によっても見分ける事ができます。
モラハラ加害者の場合は、鼻で笑って冗談の類だと思ったり、すぐに否定するなどし、相手の受け取り方の問題にしたり、他人の責任にしようとしたりします。
モラハラ加害者ではない人の場合は、まずは話を良く聞き、自分のどんな行為がモラハラに該当する可能性があるのか、相手がどう感じているのか、自分のどのような振る舞いを改善すれば良いのか、どのように関係修復をすれば良いのかを考えはじめます。
この「全く自分を省みない」特徴の真逆の傾向がある人、つまり「よく反省する人」が、次に説明する
モラハラ被害者になりやすい人
の、性格でもあります。
モラハラ被害者になりやすい人の特徴
モラハラ被害者になりやすい人には、以下のような特徴があります。
・仕事熱心で責任感があり、勤勉である
・調和や秩序を大切にする
・他人の気分や振る舞いに敏感である
・人あたりがよく、他人に気を遣い、よく配慮が行き届く
・相手の悪いところより、良いところを探そうとする
・よく反省し、自分を責める
・頑張り屋で我慢強い
・献身的で、自分を犠牲にしてでも他人や組織の為に尽くす傾向があり、その思いが相手や職場の人達に少なからず伝わっている(または伝わってほしい)と思っているが、恩着せがましい事は決して言わない
・他者との関係がこじれると、全て自分が悪いと思い込み、いつまでもクヨクヨと「もっと自分がうまく立ち回っていれば悪い結果にならなかったかもしれない」と反省し続ける
上記の特徴は、一言でまとめると、「モラルの高い人」と言い換える事ができます。
「倫理や道徳に真剣に向き合っている人」の事です。
(※心理学用語では「メランコリー親和型の性格」と言われます。)
つまり、モラル・ハラスメントとは、「高いモラルにつけ込んだ精神的な嫌がらせ」と表現する事ができると思っています。
モラハラ加害者は、被害者になりやすい人を嗅ぎ分ける嗅覚に優れています。
上記のような特徴の人が自分の支配下におかれたり、または自分の支配下におくように仕向けて実現できたりすると、自己愛を満たす為に、まもなくモラハラを開始します。
モラハラ被害者になりやすい人は、献身的で自分をよく責めるので、モラハラ被害にあってもなかなかその事実に気がつきません。
なぜなら、加害の手法が、始めは薄く、取るに足りない内容ばかりだからです。
被害者がモラハラを受けて嫌な気分を味わっても、
「自分が気にしすぎているのが悪いのかもしれない」
「自分が我慢したり、振る舞いを変えたりすれば上手くいくかもしれない」
と考えてしまいます。
しかし、我慢し続けると、やがてモラハラ行為はエスカレートしていき、被害者の精神は徐々に蝕まれていく事になります。
モラハラ被害にあった場合の対処方法
さて、自分がモラハラ被害にあっていると気づいた場合、どのように対処すべきでしょうか。
モラハラ被害者というのは、基本、話し合えば誰とでも分かり合えるはずで、なんとか関係を改善したいと考える優しい性格の持ち主です。
まずは自分が譲歩できるところは譲歩し、耐えられない部分が出てくると話し合いなどで相手にも譲歩を求めようとします。
しかし、むしろこの行為が、逆に事態を悪化させます。
モラハラ加害者は自己愛が強く、無自覚にターゲットを人間扱いしておらず、自分に備わった便利な部品のように思っているので、ターゲットが自分に譲歩を求めてくる事はその主従関係が崩れる事であり、許せないのです。
ターゲットが「話し合い」を求めてくる事は「反抗」と見なされます。
そして、モラハラ加害者は論争好きなので、「反抗」されると気分が高揚するのです。
そもそも、モラハラ加害者は自分より弱い相手をターゲットに選んでいるので、被害者は言いくるめられて納得させられてしまったり、一喝されて黙ってしまったりし、被害者にとって何の改善もないまま終話してしまう事が多いのです。
これからお伝えする有効な対処方法は、優しい性格のモラハラ被害者にとっては酷な内容も含まれるかもしれませんが、以下のようなものになります。
・相手の良心に期待しない
・自責の念や罪悪感を捨てる
・味方を作る
・離れる
・自己肯定感を大切にする
それでは、順に説明していきます。
相手の良心に期待しない
モラハラ被害者は献身的に相手に尽くす性格であり、相手は自分の献身に少なからず感謝しているはずだとついつい信じたくなるものですが、その認識は誤りです。
加害者にとって被害者は、単なる自分の一部品であり、便利な機能の一つでしかないのです。
被害者の献身は当たり前の行為であり、感謝に値するものではありません。
そして、時々「ちょっとは優しいところを見せてやろうか」という気分になったりして、逆に無自覚に加害したりします。
<モラハラ事例3>
例えばターゲットが求めてもいない物をプレゼントのように買い与え、実際は加害しているケースがあります。
私の家族の例ですが、父は典型的なモラハラ加害者であり、母はモラハラ被害者でした。
自宅にはガスの炊飯器が設置してあったのですが、スイッチに予約機能がないので手動で点火しなければならず、保温機能すらない旧式の物でした。
ですので、毎朝炊き立てのご飯を作る為に、1時間早く起床しなければならない生活を、母は10年我慢し続けながら、次は予約機能と保温機能のある電気炊飯器がほしいと常々言っていました。
ところが、10年経ってそろそろ炊飯器を買い換えようかという時期になった時、突然父がニコニコしながら、予約機能も保温機能もないガスの炊飯器を購入して帰宅したのです。
母は感情を爆発させました。
そして父は悲しい顔をしながらこう言ってのけたのです。
「せっかく喜ぶ顔が見たいと思って買ってきたのにな。電気よりガスで炊いた方が美味しいに決まっているのに」
<モラハラ事例4>
私の祖父母と父はクーラーが大の苦手でした。
昔の性能の悪いクーラーで体調を崩した経験から、過度にクーラーを嫌っていたのです。
なので、真夏の猛暑日ですら団扇や扇風機で過ごすような家庭でした。
ある猛暑日の午前中、父は母に向かってこう言い放ちました。
「昼は素麺!茹でるだけだから簡単でいいだろ?」
モラハラ加害者は、基本的に、ターゲットに対する優しさを持ち合わせていません。
何かを与える時も尽くす時も必ずアピールが伴いますし、ターゲットが自分から離れて何か自由な行動をしたい場合も「許可する」という感覚でいます。
そうして、与えた事や許可した事に対してターゲットが感謝したり喜んだりしないと、ターゲットにおかしなところがあると考えるのです。
なので、まずは「モラハラ加害者には(優しさなどのような)良心はない」と知り、改善を期待せず、キッパリと諦める必要があります。
ここで誤解してはならないのは、モラハラ加害者は全ての面で良心がない訳ではないという事です。
モラハラ加害者にも一定の良心はあります。
家族愛も当然ありますし、友人が困ったら助けます。
テレビで痛ましい事件を見れば被害者に同情をし、加害者に怒りを覚えます。
しかし、その良心がターゲットに対しては発揮されなくなるのです。
なぜなら、加害者の持つ強すぎる自己愛が、心象風景の中でターゲットを取り込み、自分の一部と化してしまうからです。
健康的に自己愛が拡張される人の場合は、例えば「車を傷つけられたら自分が傷つけられたように感じて怒りを覚える」というように、所有物まで自己愛を拡張することはあります。
しかし、モラハラ加害者の場合は、配偶者や子供や部下など、人間にまで、自己愛を拡張してしまいます。

自己愛が他者を巻き込み、自他境界を曖昧にする
そうすると、自他の境界が曖昧になり、他者を所有物のように扱い、自分の思い通りに動かねばならない機能の一つという認識になります。
なので、一緒に出かける時に着る服や、身に付ける小物にケチをつけたり、思い通りに動かないと心配するより先に苛立ったりするようになります。
また、家族とは言え他人の所有物を勝手に使用したり、勝手に部屋に入ったり、許可なく売ったり、家具を移動するなどの行為を平気で行うようになります。
自責の念や罪悪感を捨てる
モラハラ被害者は、真面目で調和を大切にする性格であり、物事がうまく行かないと自分にも責任があると考えたり、罪悪感を持ったりします。
そしてお互いが少しずつ自責の念と罪悪感を分かち合えば、対等な関係で改善に望めると思っています。
ところが、モラハラ加害者は、そんな被害者の性格を本能的に熟知しており、巧みに自責の念を刺激して、責任を押しつけ、優位に立とうとします。
加害者と被害者では、最初から設定しているゴールが異なるのです。
なので、被害者は加害者と対等なメンタルを保つ為に、自分の心に自然と沸いてくる自責の念や罪悪感に身を委ねたくなるような善なる気持ちを抑え込み、戦う姿勢を取る必要があります。
味方を作る
モラハラ被害者は、味方を作りづらい状況に置かれている事が多いです。
職場であれば、一人だけ別の部屋で隔離されている場合があります。
家庭であれば配偶者の実家に住み、外で収入を得る事を許されず、家事に専念させられている場合があります。
ですので、職場でも家庭でも、味方は外部に作る必要があります。
味方として最もふさわしいのは、完全なる第三者です。
会社の問題であれば顧問の産業医、もしくは弁護士。次点で、部署外の労務担当者という選択肢もあります。
家庭の問題であれば、弁護士やカウンセラーなどです。(診断を下す役割の精神科医よりも、話を聞いてくれる役割のカウンセラーの方が望ましいでしょう。)
次点で、ハラスメントに詳しい知人や友人という選択肢になりますが、加害者と面識がある人は除外しましょう。
モラハラ加害者は外では人当たりが良く、知り合いも自分の味方につけてしまう術に長けているからです。
被害者がモラハラの内容をどれだけ並べて説明しても、一つ一つは取るに足りない内容ばかりなので、
「大した事ない」
「あなたの気にしすぎだ」
「他の人はもっと大変な思いをしている」
「あんなに良い人がそんなに酷い事をするはずがない」
などと言われて、辛さが伝わらず、逆に徒労感と孤立感を深めてしまいます。
離れる
自分がモラハラ被害にあっていると気付いたら、可能な限り早く離れるのが望ましいでしょう。
金銭的に困窮していたり、育児中だったり、事情によって物理的に離れる事が難しい場合は、できるだけ長時間、一人でいられる時間を作るようにしましょう。
モラハラ被害者は、長期間にわたってじわじわと精神的な攻撃を受け続ける事で、自覚なく精神が消耗している事があります。
一人の時間を多く持ち、誰の目を気にする事なく自由に振舞う事で、精神の回復を待ちます。
モラハラ加害者が執着心の強いタイプだった場合は、物理的に離れても知人や子供などを使って間接的に嫌がらせを行ってくる場合があるので、その場合は法的に離れる選択肢も視野に入れましょう。
離婚だけでなく、今後のやりとりについても、必ず第三者を介して行うようにしましょう。
モラハラ加害者は、世間体を悪くする事はしっかり避ける性格なので、法的な拘束力が働けば破ってくる心配はありません。
自己肯定感を大切にする
モラハラ被害者になりやすい人は、モラルを尊ぶあまり、自己肯定感が低くなってしまう傾向があります。
倫理・道徳・人間関係における秩序と調和を守るという『あるべき自分』を高く設定してしまう事で、『ありのままの自分』を否定してしまうからです。
『あるべき自分』と『ありのままの自分』との落差が、自己肯定感の低さを生みます。

高すぎるモラルが自己肯定感を低くするケース
自己肯定感を大切にするには、『ありのままの自分』を否定せず、自分の思うがままに考え、思うがままに振る舞っても良いという感覚を持つ事が必要です。
モラルという呪縛から自分を解き放ち、自由な心のままに生きても不安を感じる事なく、許されている感覚を持つ事が必要なのです。
そのための第一歩として、まずはモラハラ加害者との関係を一旦切り離して自分だけの時間を多く持ち、「ありのまま、自分の思うがままにふるまう」という事に、自分を慣れさせる事が大切になるのです。
自己肯定感について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです↓

まとめ
モラハラ加害者は、世間から見ると、人生の勝ち組・成功者である事が多いです。
人当たりも良く、部下や配偶者などは、良い人と巡り逢えて羨ましいとさえ思えるかもしれません。
しかし実態は、誰かを踏み台にしてのし上がり、他人を蹴落として自分の地位を固め、無自覚に人に犠牲を強いて生きています。
私たちは、気づかぬうちにモラハラ被害者にならぬよう、または無自覚にモラハラ行為に加担させられないよう、知識を得て、注意深く生きる必要があると思っています。
最後に、マリー・フランス=イルゴイエンヌ著『モラル・ハラスメント』の終章に記載された、この言葉をご紹介して締め括りたいと思います。
「成功だけが人生の価値を決めるのであれば、誠実さは弱さのしるしと見え、平気で人を傷つける事は能力の証のように見えるだろう。」
コメント