多様性とは?多文化共生・ダイバーシティ・差別・寛容・万能化

皆違うマインド、だから国境を引く 考察
皆違うマインド、だから国境を引く

「多様性のある社会」

この言葉を見ると、あなたはどのような景色を思い浮かべますか?

例えば、

・目や肌や髪など、色とりどりの多様な人種が混ざり合って暮らしている社会

・性的マイノリティが奇異の目で見られずに、自分を隠す事なく生きていける社会

・特徴的な身体や精神を持つ人が、周囲に気兼ねする事なく生活できる社会

・フリーランス、フレックスタイム制、副業、在宅ワークなど、個性を活かした働き方を選べる社会

・オタク活動やマイナースポーツなど、特定の趣味や嗜好を貶されたり、不当に悪い印象を持たれる事なく、堂々と楽しめる社会

「多様性のある社会」という言葉には、ジョンレノンのイマジンの歌詞のように、優しくて、平和的で、革新的で、明るい未来をイメージしている人が多いのではないかと思います。

しかし、そんなポジティブなイメージを持つ人々がいる一方で、不安や、苦悩や、疑念の声をあげる人々がいるのもまた事実です。

「多様性のある社会」とは、どのようなものなのでしょうか。

 

考えた結果、私としての結論は、

「どのようにも解釈ができるもので、決めつけて勝手に意味を狭めてはならないもの

となりました。

このような結論になった理由を詳しく説明していきます。

この記事を最後まで読んで頂ければ、他者を尊重する事への理解が進み、より良い人間関係を築けるヒントがきっと得られるのではないかと考えています。

「多様性に対する考え方」3つの対立項目

多様性について語る時、必ず意見が合わずに対立する人々が出てきます。

対立する人々を観察し、私なりに考えをまとめた結果、「多様性に対する考え方」には次にあげる3つの対立項目があると思いました。

・広さ(面積)
・長さ(時間)
・深さ(心)

そして、それぞれについて、「自覚している場合」と「無自覚な場合」があると思いました。

順に説明していきます。

広さ(面積)

1つ目の対立項目は、土地の広さです。

「多様性のある社会」について思い浮かべる時、

・「狭い範囲」で多様性を実現したい人
・「広い範囲」で多様性を実現したい人

この2者が、意見が合わずに対立します。

※多様性には様々な要素がありますが、考えやすくする為、まずはあえて人種だけに絞って、単純化して考えてみます。

狭い範囲

例えば、白人だけで作られた街があるとします。

白人だけの街

白人だけの街

「狭い範囲」で多様性を実現したい人にとって、この街は「多様性のない街」に見えます。

なので、下のように、

多様性のある街

多様性のある街

黒人や黄色人種が入る事で、この街に「多様性」が生まれると考えます。

 

貿易港周辺はこのような街になる傾向があります。

発展した大都会でも同様です。

このような街には、下記のようなメリットとデメリットがあります。

【メリット】
・先進的な知識や感覚が入ってきやすい
・自分で選べる生活スタイルの選択肢が多い
【デメリット】
・多様な価値観が混在してトラブルが多い
・条例などによって公的なローカルルールや罰則が増えていく

広い範囲

例えば、3つの街で作られた国があるとします。

3つとも、白人、黒人、黄色人種が混ざり合ったそれぞれ「多様性のある街」だとします。

多様性のある3つの街

多様性のある3つの街

「多様性のある街」と「多様性のある街」と「多様性のある街」。

「広い範囲」で多様性を実現したい人にとって、3つとも同じ性質の街が並んだ国は、均一で「多様性のない国」です。

なので、下のように、

多様性のある国

個性的な3つの街→多様性のある国

同じ人種が固まって街を作り、街ごとに個性が生まれる事で、「多様性」が生まれると考えます。

 

内陸部は既存の住人によって、自然と個性的な街になる傾向があります。

また、貿易港からちょっと離れた地区には、移民が固まって暮らす事で、個性的な街が作られる傾向があります。

例えば南米の日本人街とか、世界中に散らばるチャイナタウンとか、コリアンタウンとか、ブラジル人街とか、フィリピン人街などです。

このような街には、下記のようなメリットとデメリットがあります。

【メリット】
・伝統的な知恵が継承されやすい
・わざわざ説明しなくても理解しあえる事が多い
【デメリット】
・暗黙のルールが増え閉鎖的になりやすい
・新しい知識や感覚が入って来にくく、発展が遅れる




長さ(時間)

2つ目の対立項目は、時間の長さです。

「多様性のある社会」について思い浮かべる時、

・仕事の時間
・プライベートの時間

この2つの時間に、どの程度多様性を取り入れたいかによって、考えや感覚が異なります。

※多様性には様々な要素がありますが、考えやすくする為、まずはあえて仕事とプライベートだけに絞って、単純化して考えてみます。

仕事の時間

仕事の時間で多様性を取り入れたい人は、自覚の有無に関わらず、例えば下記のような考えを持つ事があります。

【多様性を取り入れたい】
・自由な働き方ができ、個性を発揮できる職場環境で働きたい
・役員も現場も男女同数で、性的マイノリティにも理解と尊重のある会社がいい
・多様な人種や国籍の人と繋がる業種や職種を選びたい

逆に、仕事の時間で多様性よりも優先度の高い価値観がある人は、自覚の有無に関わらず、例えば下記のような考えを持つ事があります。

【多様性よりも優先度の高い価値観がある】
・言葉も性格も価値観も、もともと自分と似た性質の人を結果的に採用してきているし、そもそもそういう人しか応募してこない
・わざわざ説明しなくても、以心伝心や阿吽の呼吸で仕事ができるような関係性を築きたい
・新人は黙って先輩についてきて、技術は見て盗むものだ

プライベートの時間

プライベートの時間で多様性を取り入れたい人は、自覚の有無に関わらず、例えば下記のような考えを持つ事があります。

【多様性を取り入れたい】
・様々な人種や宗教の人達が一緒に仲良く暮らせる街がいい
・同じ趣味なら海外の人とも積極的に交流したい
・道路や建物などはバリアフリーであるべきだ

逆に、プライベートの時間で多様性よりも優先度の高い価値観がある人は、自覚の有無に関わらず、例えば下記のような考えを持つ事があります。

【多様性よりも優先度の高い価値観がある】
・「向こう三軒両隣」「義理に厚い」地域の結びつきを大切にして暮らしたい
・昔ながらの街並みが好き。移民が増えて宗教施設などが建つと景観が壊れて悲しい
・伝統的な祭を守っていきたい。クレームの為に盆踊りをヘッドホンで静かに行うなんてありえない

深さ(心)

3つ目の対立項目は、心の深さです。

「多様性のある社会」について思い浮かべる時、

・「表層」を重視する人
・「深層」を重視する人

この2者が、意見が合わずに対立します。

心の深さで対立する人々は、極端になると政治的な考えでも対立し、激しく罵倒し合う事もあるので、SNSなどでそういったアカウントと関わる時は注意が必要です。

表層

表層とは、

・人種
・性別
・年齢
・身体的特徴
・病歴
・出身地
・国籍
・宗教
・職務経歴

など、外見でわかるものや本人が明示しているものの事です。

表層の多様性を重視する人は、

差別

に敏感です。

そして、深層の多様性を重視する人の考えを理解できず、「差別主義者」などのレッテル貼りを行い、蔑む様子を稀に見ます。

性格的には、なんでも明示的にルール化する事を好みます。

「憲法がこうだから、法律もこうあるべきで、判決もこうあるべきだ」というトップダウンの成文法と呼ばれる考え方を好みます。

「みんなが同じマインド」を持って、ルールを守れば、国境など不要で、平和で理想的な世界ができると考えるので、国籍や国土をなくしたいと思っています。

皆が平和に満足し、平等で利害関係が発生しなければ、争いごとも起きないので、軍隊は無駄なもので、無い方が良いと考えます。

地球規模で人が流動的に自由に行き来できるようにする事で、多様性を実現しようとします。

これがリベラルや地球市民と呼ばれる考え方と親和性の高い「多様性」です。

一つの世界に、皆同じマインド

一つの世界に、皆が同じマインド

深層

「深層」とは、

・習慣
・経験
・嗜好性
・価値観
・倫理観
・歴史観
・帰属意識

など、外見ではわからないものや、明示されていない暗黙のもの、または秘匿しているものなどです。

深層の多様性を重視する人は、

・尊重

に敏感です。

そして、表層の多様性を重視する人の考えを受け入れられず、「売国奴」などのレッテル貼りを行い、蔑む様子を稀に見ます。

性格的には、「六法全書が厚い国は恥ずかしい国だ。道徳や倫理がないから、法律で縛らないとまとまらない国民だからだ」というように、明示的なルール化を好みません。

「前回の判例ではこうだから、今回もこう判決されるべきだ。」という判例法と呼ばれる考え方を好み、ボトムアップで「現実に即して法律や憲法を解釈しよう、または変えよう」と考えます。

「みんなが違うマインド」なのだから、似たマインドの人同士で集まって生活し、国境を引いて不可侵のルールを作ればいいと考えるので、国籍と国土にこだわります。

マインドが違う者同士で利害関係が発生するのは当たり前で、争い事が起きてしまうのは仕方が無い事だと思っているので、それを守るために軍隊が必要だと考えます。

国単位での個性を尊重して、多様性を実現しようとします。

地球規模で人の流れをある程度固定化し、塊ごとに特徴的な文化の発展を見守る事で多様性を実現しようとします。

これが保守や国粋主義と呼ばれる考え方と親和性の高い「多様性」です。

皆違うマインド、だから国境を引く

皆違うマインド、だから国境を引く




自覚と無自覚

自分はどのような多様性を望んでいるのか、普段意識していない人でも、考え方の指向性は無自覚にどちらかに偏っているものです。

あるいは、自分では「表層を重視している」と思っていても、現実では無自覚に「深層を重視」しているケースもありますし、経験によって考えが変わっていく事もあります。

経験によって変わっていく考え

例えば、観光地でレストランを経営している場合でシミュレーションをしてみます。

1年目

地方自治体の観光PRが功を奏し、諸外国から観光客が訪れるようになりました。

お店が繁盛し始めたのは良かったのですが、それに伴い一部の国から来る人々のマナーの悪さが目につきました。

例えば、

・バイキングで出来立ての料理を大量に盛って独占しておきながら食べずに残してしまう
・食べカスを床にこぼす
・他の客にぶつかって怒鳴る
・大きく口を開けて聞こえよがしにゲップをする

などの特徴が、他の客の迷惑になっていました。

しばらくすると、なんと隣のお店が「●●人お断り」の貼り紙を出してしまいました。

自分のお店は絶対にそんな差別的な事はしないぞ!と心に誓いました。

無自覚な1年目

無自覚で理想が高い1年目

2年目

差別的な事はしたくありませんが、実際に迷惑を被っている他の観光客には不快な思いをさせたくありません。

マナーの悪い観光客に守ってもらいたいルールを、その国の文字で箇条書きにし、店内の目立つ所に貼りました。しかしルールを守ってくれる人は一人もいませんでした。

言葉を覚えて、片言でやんわりと注意をしてみる事もしました。しかし無視されたり、理解できないフリをされるばかりでした。

差別的な事はしたくないという気持ちがありながらも、実際に苦労を経験してみて、隣のお店が「●●人お断り」の貼り紙を出したくなった気持ちも、まぁわからなくはないかな、などと考えるようになりました。

様々な経験を経た2年目

経験を経て現実を知った2年目

3年目

その国からの留学生がアルバイトに来てくれるようになりました。

その学生から様々な事を教わり、対策を考え実施する事ができました。

例えば、

・貼り紙を読んで従う習慣はないので外す
・他の観光客とフロアを分ける
・食べカスをお皿に置いておきたくない習慣があるので、食べカスを捨てる為のシートを敷いて置く
・罰金を恐れるので、バイキングで残したら追加料金のルールを最初に伝える

などの対策が功を奏し、スタッフも、その国からの観光客も、他の観光客もストレスなく過ごせるようになりました。

フロアを分けるという点では多少の妥協があったものの、途中で心が折れずに、全ての観光客を受け入れ続けて良かったと思いました。

対応できた3年目

理想に近づいた3年目

寛容と万能化

上記のシミュレーションを見てわかるように、理想だけで自分が望む多様性を完璧に実現する事はできません。

実際には様々な困難があり、人によっては対応しきれずに疲弊してしまったり、妥協点で納得する場合もあるでしょう。

表層の多様性を理想通りに実現する為には、個人がどんな相手にも、どんな状況にも対応できるよう、万能化しなければならないという厳しさがあります。

内部の事情を知らない他者が、その厳しさを振りかざして、「●●人お断り」の貼り紙を出したお店をSNSで晒して糾弾する事例を稀に見ます。

自分とは違う多様性マインドを持つ人に対して、どこまで寛容になり、どこから尊重し、どこから理解を促すのか。

このあたりが多様性の難しさだと考えています。

まとめ

この記事をここまで読まれた方は、自分の考える「多様性」のイメージが、誰もが思い描いているイメージではない事に気づかれたかと思います。

「多様性」とは伸縮自在であり、人の立場や経験や、その時の気持ちによって、どのようにも解釈できるものであり、勝手に決めつけて意味を狭めてはならないものだと思います。

この記事で例としてあげた、リベラルや保守主義だけでなく、色々な「多様性」のイメージを持った人がいて、普段このような考えをわざわざ話す事は無いでしょうが、実は相容れない考えの人が身近に触れ合って生活しているものです。

自分の中の「多様性」の理想を絶対的なものだと思いこみ、知らず知らず他人に押しつけて、今の社会が理想から離れているからダメな社会だと思ったり、自分と考えの合わない人を過剰に嫌ったりしないよう謙虚な姿勢でいるのが良いのではないだろうか、と私は考えています。




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